『アトリエ四景』展覧会用書き下ろし作品 2017 H1770mm x W635mm x 4枚
水彩絵の具・筆ペン・ロール石州紙
『アトリエ四景』 展示風景
展示風景
展示風景
展示風景
スケッチブックについて
スケッチやクロッキーは本来、人に見せることを想定していない。展示にあたり無意識に見やすいものを選んでしまうが、本来は分かりやすい形態を持たない『かすかに頭の中をよぎったインスピレーションの覚え描き』のような状態が自然な姿のように思える。そういったものの方が当時何を考えていたのか、その淀みの中からすくい取ろうとしていたものが何なのか?など浮き彫りになる側面がある。
とはいえ、今回の展示に際しスケッチブックをかき集めてみたが、充実感として残る「描き切った」「頑張って観察した」などの要素も決して軽視出来ないと感じた。
『レモン 細密着彩』 1998頃
『コーラ瓶』1998年頃
『2001年頃 久国寺「歓喜の鐘」』 2001
『トルコ カッパドキア』 2001
『トルコ カッパドキア』 2001
『城壁』 2003年頃
『ツキノワグマの手』2003年頃
『牡丹 上野東照宮ぼたん苑』2004年頃
『ジャガー 野毛山動物園』2004年頃
『タテガミオオカミ 上野動物園』2005年頃
動植物のスケッチについて
動物は本当に難しい。スケッチブックを持ち、勇んで動物園に行っても動き回る動物に対しなす術なく戦意喪失して帰ることも多い。結局、動物が座り込んだ図鑑のような絵や、写真を引っ張ってきたような絵になりがち。学生時代、円山四条派の絵や岸竹堂や竹内栖鳳に師事した西村五雲の『日照雨』という絵に憧れ、動物画を志すようになった。
植物に関して。ようやく最近、一年通じて植物の手触りがどのようなものか、かすかに分かってきたような気がする。またそういった要素のある植物を描けるようになりたいと思っている。日本画家と名刺に入れている以上、花鳥風月と予備校時代に培った手癖はそう簡単に忘れることができない。もちろん良い意味でも悪い意味でも。
『神奈川県三浦市油壺験潮場』2005年頃
『東京大学三崎臨海実験所 旧本館 スクラッチタイル貼りの建物は大正〜昭和初期の流行』2006年頃
『セキレイ』2006年頃
『木工作品 図面』2006年頃
『茨城県取手市龍禅寺三仏堂組物』2006年頃
『茨城県取手市福永寺山門』 2007
『歌舞伎座』 2007
『茨城県取手市瑞法光寺』 2007
立体作品・建造物のスケッチについて
かねてから近代建築、社寺仏閣を見て回るのが好きだ。特に何の素材で出来ているかが伝わるような建物が好きだ。日本画を制作していると天然素材で構成された作品の最大限大きな支持体として、木造建築も視野に入ってくるような感覚を抱く。そういった発想の帰結として、同じ構成素材から出来ている木造建築との親和性を前提とした作品発表を行いたいと思い制作した作品も多い。
「土地」「建造物」「作品」が素材を同じくして再帰的な循環構造を持ったように見えたとき、作品が成就されたという快感を覚えることがある。そういった作品作りのためのフィールドワークとして、土地に根付いた建築物や建築様式などをスケッチして回った。
『茅葺美術館の想像図』 2008
『大樹の美術館想像図』 20086
水槽の虎設定画』2012
<>『水槽の虎設定画』2012
『水槽の虎』作画・背景資料について
カラス、虎、植物。自分にとって馴染みのあるモチーフを使いアニメーションを作りたいと思い制作した。中国の後漢書に書かれているという下手なトラは狗(犬)に見える(虎を画いて狗に類す)との格言を横目にヒヤヒヤしながら作画した。
難点は虎の肩甲骨や縞模様、なにより四つ足の動物は描いていて頭がこんがらがる。なぜあんなに足が多いのか。助成金を得て制作したが映像はいまだ完成していない。だが予告として世に出したこの作品のおかげで、その後、商業的な映像制作への道が開かれていったように思う。
『人物スケッチ』
『人物スケッチ』
人物クロッキーについて
普段の制作では人物を描くことは決して多くなく、それ故いざというとき人物描けなかったらどうしよう‥と考えてしまう。打開策として、電車やお店、会議の場など人の集まる場所で人物スケッチを行なうことにしている。
展示にあたり高校時代('96〜'99頃)の電車クロッキーを見返してみたが、携帯電話を使っている人はほとんどいなかった。この先も長い年月続ければ人間の行動様式や時代性が無意識ながらも抽出できるのではないかという思いもあり、続けている。(※街中や公共施設でのクロッキーは節度をもって行いましょう。)
『泉寺境内』2017
『オニノゲシ』 2017
書籍の装画について
日本画作品や映像作品と比べ、規定サイズが小さく枚数も少ないためリラックスして仕事が出来ているような気がする。映像作品由来で仕事が来ることが多かったため、ほぼ全てデジタルで作業している。特に「緑」を使った表現をリクエストされることが多く、その後の絵画制作にもフィードバックされる要素も多い。 日本画を規定している要素として「素材・画材」「保存の問題」などが挙げられるが、一方で制約の少ない媒体(PC上という制約はある)との折り合い、付き合い方が今後の課題にもなっている。デジタルの仕事の中でも大きなサイズで印刷するポスター類の仕事は、完成が近づく程、密度が上がるため、PCの処理速度が遅くなり期日とのにらめっこになることもある。設備投資が肝心。
アーティストトーク「多彩な活動のもとにあるもの」 2017年6月18日(日)14:30~16:00 場所:河合塾美術研究所・新宿校館内
河合塾美術研究所新宿校 授業風景 四宮義俊さんトーク紹介と展示期間折り返しのご案内
■http://geidaiblog.kawai-juku.ac.jp/tokyo/2017/06/post-162.html/
6/18四宮義俊さんトーク「多彩な活動のもとにあるもの」採録 - 河合塾美術研究所 新宿校 授業風景
■http://geidaiblog.kawai-juku.ac.jp/tokyo/2017/07/618-1.html/
展覧会用フライヤー[表面]
展覧会用フライヤー[裏面]
展覧会カタログ
編集:伊藤洋介
デザイン:川名亜海
撮影:天久高広
企画・制作:Gallery Kart 運営委員会/河合塾美術研究所
発行者:Gallery Kart 運営委員会/河合塾美術研究所
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-14-5 河合塾美術研究所
☎0120-327-414(河合塾美術研究所新宿校)
■http://art.kawai-juku.ac.jp/