個展
四宮義俊個展 『顕現SOKKI』

ミサイルが飛んでこない


西の上空から私めがけてミサイルが飛んでくるらしいと誰か囃し立てた。だがミサイルはちっとも飛んでこない。その鋭角なフォルムから想像される殺人兵器の内側にはもっとも生命を感じされる数列が潜んでいる。 『SOKKI』というシリーズを通じて表しているのは「羅列」と「菱形」だ。そもそものネタ元である『仁王捉鬼図』を観るとき、おそらく一番初めに目がいくのは鬼でもない、煌びやかさでもない。地面に精緻に描かれた「菱形」だ。幾何学的な「羅列」にはその精巧で無機的な形態とは裏腹に、実は有機的な生命力が繰り返し描かれている。こちらが仁王捉鬼図の本質なのかもしれないと思わせる。生命はいつも菱形の裂け目から生まれてくる。「菱形」には生命。「羅列」には生産。この緊張した関係の先に物語が生まれてくる。ミサイルも同様で整然と並ぶ「羅列」や「螺旋」にはおそらく生命と密接に関わる物語が隠されているに違いないと思っている。




『SOKKI_プラスティックドール・浮遊、落下』

神話や宗教というフォーマットの中に見いだされる「浮遊」「落下」。すれ違い、反復しながらも世界の中では相対的な上昇を試み続ける現代。落下する中空と雲上からめでたく始まった近代の幕開けとともに顕現した二対。 現代を可逆的に捉え直す分岐点として機能しうる二対ではなかったのだろうかと妄想した。 19世紀西洋の厭世的なムードか、文明開化の楽観的な日本か。食い違う主張のようにもみえるエポックメイキングな二作品の対比から現代に生きる私たちは絶えず迫られるupside down☆その視点はまさに今立たされている岐路を表しているように思える。
『サッフォーの死』ギュスターヴ・モロー1870年頃/『非母観音』狩野 芳崖1888年 Pre日本画史観=プレニッカン=SOKKI




右『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』
2017
H1880mm x W1395mm

神郷紙・薄美濃紙・墨・胡粉・水干絵具・カラーインク・銀箔・プラチナ箔・木製パネル






『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分





『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分





『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分





『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分












左『SOKKI_プラスティックドール・落下』
2017
H1880mm x W1395mm

神郷紙・薄美濃紙・墨・胡粉・水干絵具・カラーインク・銀箔・プラチナ箔・木製パネル







『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分





『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分





『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分





『SOKKI_プラスティックドール・浮遊』 部分







展示風景






展示風景












『SOKKI_宝誌フィボナッチ』

その暴⼒性はエンジンに似る。再帰的な構造の中で増幅され、放出されるエネルギー。 その物体が持っている実在感は内側から起りあがってくる 生命力を想起させる。 無から起き上がってくるエネルギーの依拠を探る⼿段を構造体として表現し解剖した。 生命やエネルギーの発露として創造した作品がその内側に暴力装置としても機能しうる形態を持っていることは、偶然にも昨今のミサイル発射関連のニュースを目にするたびに複雑な綾を感じさせる。 野ざらしにされた「内側」にも物語 は宿っているのだろうか。 『宝誌和尚立像』11 世紀頃




『SOKKI_宝誌フィボナッチ』
2017
松材・合板 
約4000mm×2000mm







『SOKKI_宝誌フィボナッチ』展示風景








『SOKKI_宝誌フィボナッチ』展示風景







『SOKKI_宝誌フィボナッチ』 部分






『SOKKI_宝誌フィボナッチ』 部分






『SOKKI_宝誌フィボナッチ』 部分














『SOKKI_宝誌フィボナッチ』mockup
2017
サイズ可変
バルサ材・白色塗料 








『SOKKI_宝誌フィボナッチ』のためのスケッチ
2017
H318mm×W410mm  
鉛筆・ペン・水彩絵の具・画用紙

個人蔵








『SOKKI_宝誌フィボナッチ』のためのスケッチ
2017
H318mm×W410mm  
鉛筆・ペン・水彩絵の具・画用紙










『SOKKI_宝誌フィボナッチ』のためのスケッチ
2017
H318mm×W410mm  
鉛筆・ペン・水彩絵の具・画用紙











『SOKKI_エチュード01』
2016
H410mm×W410mm
神郷紙・典具帖紙・石州紙・墨・胡粉・水干絵具







『SOKKI_エチュード02』
2017
H318mm×W410mm
神郷紙・典具帖紙・石州紙・墨・胡粉・水干絵具









『蛮勇引力・SOKKI・寒山拾得図』

寒山拾得という題材はある種のヒッピーとして生きる二人の怪僧を通して、世の中の持っている規範意識の外側から寛容さや多様性を説いているものだと考えている。 詩を詠み、悠々自適に暮らす二人の怪僧の奔放さは観る者に世俗的な規範から外れている存在に対する憧れを抱かせ、自分は何かを理解している、分かっているというおごりをあざ笑う存在として描かれてきたように思える。 ISILによる日本人拘束事件について、二人の友情物語なのか?官房長官曰くの「蛮勇」なのか?アメリカの国民的画家ノーマンロックウェルと時代遅れの象徴、浦島太朗を対峙させることで外側から見えるものと内側から見えるものの違和感を表現したいと思った。意図せず時代から取り残された主人公と古き良き時代の大国を代表する画家。自分の立ち位置やその時代の価値基準に合わせ、その都度、都合よく物語は書き変わってしまう。
結果、物語はより世知辛い方向へとドライブしていく。ふとした隙間に通り過ぎるニュースに耳を傾け、葦の髄から天井を覗くような心境で何か記しておくことができなかったかと思い、今回の制作に行き当たった。グローバル化していく世の中で情報が溢れれば溢れるほど、なぜかドメスティックな方向へと舵をきろうとする現象について疑問に思いつつも何となく分かってしまう自分もいる。狭まっていく見識の中で寛容さや隙間が失われてしまうことに危惧を感じつつも同時に多くの情報の中で目を閉じようと思えば、閉じる事のできてしまう世界でもある訳で、そういったアンビバレンスな状況をどう生きていくのか、二人の怪僧の存在を通じて考えられるような気がしている。




『蛮勇引力・SOKKI・寒山拾得図』より拾得図
  2015
H1900mm x W1500mm(額込み)
神郷紙・典具帖紙・石州紙・墨・胡粉・水干絵具・木製パネル・栂









『蛮勇引力・SOKKI・寒山拾得図』より寒山図
2016
H1900mm x W1500mm(額込み)
神郷紙・典具帖紙・石州紙・墨・胡粉・水干絵具・木製パネル・栂









『『蛮勇引力・SOKKI・寒山拾得図』展示風景












会場風景







会場風景







会場風景












個展フライヤー







『個展フライヤー










『顕現SOKKI』図録





『顕現SOKKI』図録






<>

『顕現SOKKI』図録